朝日新聞より

■1929年大暴落との共通点の多さに驚く



 
まるでジェットコースターのようなアメリカの株価である。急降下したかと思うと翌日は反発。またその翌日は急降下。でも、全体的には下がり続けている。中
国の経済成長にも陰りが出てきた。このところ続いていた日本の(実感とはほど遠い)好景気は、米中向け輸出が支えていたようなもの。来年は今よりもっとひ
どいことになるかもしれない。


 9月末、ジョン・K・ガルブレイス『大暴落1929』が出た。これまでも『大恐慌』などの邦題で何度か刊行されてきた本だ。原
著『The Great Crash 1929』は1954年刊(ただし本書は1997年版)。内容は世界恐慌につながった1929年ニューヨーク市場大
暴落に関するもの。


 「まえがき」でガルブレイスは、「(本書が)増刷され本屋の店頭に並ぶたびに、バブルや株安など何事かが起きるのだ」と、彼らしいユーモラスな言い回しで書いている。実際、今回もそうだ。


 本書には、株価大暴落がどのように始まり、いかなる経過をたどったのかが書かれている。日本でもベストセラーになった『ゆたか
な社会』や『不確実性の時代』もそうだが、ガルブレイスの書き方は学術論文というよりもエッセイのよう。言葉づかいも平易で、素人にも読みやすい。


 今回の米金融危機と共通点が多いのに驚く。今回の引き金になったのはサブプライムローン問題だが、根はデリバティブ(金融派生
商品)による信用の水ぶくれにある。1929年は会社型投資信託のブームがあった。FRBや政財界、そして御用経済学者たちのズレた対応も問題を大きくし
た。もちろん80年前と現在は違う。今回の米金融危機が世界恐慌に発展する可能性は少ないだろう。とはいえ、人間というのは歴史に学ばないものなのだなあ
と、あきらめのような気持ちがわいてくる。


 奇しくも10月15日はガルブレイスの生誕100年だった。2年前に亡くなった経済学の巨人(身長2メートル超!)は、草葉の陰でなんと言っているだろう。


草葉の陰で何を言ってるかって?「この時生きていなくて良かった」と言っていると思う。



前回の大恐慌や、日本の最初の本当のバブルの時より悪い。それはお金が自国内に残っているかいないかの差。